お知らせ

I n f o r m a t i o n

年齢性の難聴について

2020/08/06
今回は年齢性の難聴についてお話しさせていただきます。
受診されるきっかけが最も多いのが、「子供や孫に聞こえてないって言われたんです」というのが多いです。どうしても若い方たちは、普段自分と同じくらい聞こえる人たち(同年代)と会話することが多いので、年齢を重ねて聞こえにくくなっている人の感覚が分かりにくくあります。
私が外来でいつもお話しさせていただいているのは「聞こえにくくなるほど年齢を重ねることができてよかったですね」です。皮肉のように聞こえるかもしれませんが、年齢性の難聴は『長生きすることでしか体感できない』んです。僕自身も長生きをして、孫の顔をみたいと考えており、年齢性の難聴を体感できる年まで長生きしたいと考えております。『年を取ったと落ち込む』のではなく、『聞こえにくくなるまで長生きできている』と、前向きの発想に変えていただければ嬉しいです。

さて、そうはいっても聞こえないのは困ります。年齢性の難聴の難しいところは、『細胞が弱っていくのを止めることはできない』んです。もしも年齢性の難聴の進行を止めることができるとしたら、もはやそれは不老不死の薬になってしまいます。もちろんそんな薬は存在しません。となるとどんな治療法になるか、です。大きく分けて二つの方法を外来で説明しております。


1.周囲の協力
先ほど記載しておりますように、年齢性の難聴を改善させることはできません。年齢性の難聴の患者さんには、周囲の方に協力をしていただくようにお願いしております。下記を相手に心がけていただくだけで、補聴器購入を遅らせることもできます。
 ①正面から話す
 後ろから話しかけられても聞き取りは難しいです。正面から話していただきましょう。
 ②静かな環境にする
 ほかの音が混じると、声の処理がより難しくなります。
 ③ゆっくりはっきり話してもらう
 早口だったりボソボソ話されると、聞き取りは難しくなります。言いにくいかもしれませんがお願いしましょう。



2.補聴器
この言葉を聞くと皆さん敬遠されるのですが、補聴器は眼鏡みたいなもので、聞こえにくくて困った場合には非常に有効な補助具になります。敬遠しがちになる原因はさまざまあるのですが、一番多い原因は「隣近所の人が補聴器は使えないって言った」なんです。
日本耳鼻咽喉科学会のホームページ(
http://www.jibika.or.jp/citizens/hochouki/yasasii.html)にも下記の記載があります。『本来であれば、自分自身や家族の判断で補聴器が必要か、効果があるかを正しく決めることはできません。聴覚検査の結果と日常の音の環境とそれぞれの人にとって重要な会話の関係から総合的に判断することが必要です。聴力障害と補聴器の両方を熟知した日本耳鼻咽喉科学会認定の補聴器相談医の診察を受けてください。』
わたくしの個人的な感想ではありますが、「補聴器はうるさくて使えないよ」という方の多くは補聴器相談医を受診せずに補聴器を購入し、適切な指導がされない状態で補聴器を使用された方が多いように感じます。
補聴器は管理医療機器であり、適切な管理と指導が必要になります。高額でもありますが、今は5万円ほどから補聴器はありますし、お仕事で聞き漏らしがあったら生活にかかわるほどの方でなければ片耳30万円もするような補聴器を両耳につける必要はありません。補聴器をどの程度のものを購入していただいたらいいかも指導するのが私たち補聴器相談医の仕事でもあります。
ほとんどの補聴器屋さんでは試聴することもできますので、特に難聴で困ってある方は耳鼻科医・補聴器相談医に一度ご相談ください。

かみむら耳鼻咽喉科 副院長 上村弘行
〒836-0012福岡県大牟田市明治町1-2-1
TEL:0944-52-4426